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グラム(Gramr

分類名剣
語意・語源「立腹せる者」(菅原)
系統シグルズ伝承群
主な出典◇『レギンの歌』
いわゆる「エッダ詩」の一つで、一連のシグルズの歌の冒頭をなす。黄金の由来、龍に化身して宝を守るファーヴニル、シグルズにグラムを鍛えるレギンなど、ニーベルンゲン伝説(シグルズ伝承)の前史をなすエピソードがちりばめられている。10世紀中頃、ノルウェーで成立したとされる。(谷口(1973))
◇『ファーヴニルの歌』  詳細は「フロッティ」の項参照。
◇『シグルドリーヴァの歌(Sigrdrífumál)』  詳細は「グングニル」の項参照。
◇『シグルズの短い歌』
いわゆる「エッダ詩」の一つ。その内容は「ブリュンヒルドの歌」とでも言うべきもので、シグルズの死の後、ブリュンヒルドの悲恋、嫉妬、復讐、シグルズと同じ火葬堆の上で死にたいという希望が、彼女の側に立つ詩人によって書かれている。韻律に無理があり、叙述が不自然で繰り返しが多いなど、言語表現上はかなり質が落ちる作品。11世紀末、もしくは13世紀初めにアイスランドで成立したものとされる。(谷口(1973))
◇スノッリ『エッダ』第二部「詩語法(Skáldskaparmál)」  詳細は「ダーインスレイヴ」の項参照。
◇『ヴォルスンガ・サガ(Vlsunga saga)』  詳細は「リジル」の項参照。
参考文献◇V.G.ネッケルほか編(谷口幸男訳)『エッダ―古代北欧歌謡集』新潮社、1973.8
◇菅原邦城訳『ゲルマン北欧の英雄伝説―ヴォルスンガ・サガ―』東海大学出版会、1979.7
◇谷口幸男「スノリ『エッダ』「詩語法」訳注」『広島大学文学部紀要』43特輯号3、1983.12
※スペルは、菅原邦城訳『ヴォルスンガ・サガ』訳注(p.160)による。

◆英雄シグルズの愛剣

ゲルマンのシグルズ伝承群に登場する剣「グラム」は、伝承の中心人物、英雄シグルズの愛剣である。そのため、シグルズ伝承に関わる複数のエッダ詩や、スノリの『エッダ』、さらには伝説的サガの一つ『ヴォルスンガ・サガ』など、多く作品に登場し、その活躍の機会も多い。様々なエピソードがあるが、まずはこの剣をシグルズが手に入れた経緯を『ヴォルスンガ・サガ』から紹介しよう(引用は菅原訳(1979)から)。


◆戦神オージンから贈られた剣

ある時、ガウトランドの王シッゲイルが、フーナランドの王でオージン(Óðinn)の子孫であるヴォルスング(Vlsungr)に逢いに出かけ、その長女シグニューを自分の妻に求めた。シグニューはこれを嫌ったが、ヴォルスングはシッゲイルとシグニューとの結婚を許した。この結婚のための饗宴が、ヴォルスング王の館で行われた時、帽子を目深に被った片目の老人(オージン)が館に入ってきた。そして、館の真ん中に立っていた木の幹に持っていた剣を突き刺した。彼は、

「この剣を幹から抜きとった者には、これを私(わし)から贈物としてくれてやる。そしてその者は、これに勝る剣を一度として握った験しのないことを己れで覚るだろう」(p.6)

と言ってその場を去った。多くの者が失敗する中、これを抜くことができたのは、ヴォルスングの長男でシグニューとは双生児の間柄であるシグムンド(Sigmundr)だった。

この武器は非常に見事で、これと同じほど見事な剣は誰ひとり見たことがないと皆が思う位だった。シッゲイルは、その剣の重さの三倍の黄金をシグムンドに提供しようという。シグムンドが言う。
 「御身は、この剣を持つにふさわしかったら、これが突き刺さっていたところで、私が抜いたと同じくらい容易くお抜きになれたろう。しかし今は、これが私の手に入ってしまったからには、これを御身は決してわがものにできない。たとえお持ちの黄金をすべて残らず与えようと言われたとて」
 シッゲイル王はこの言葉に怒って、自分は愚弄する返事をされたと思った。(p.6-7)

これを恨んだシッゲイル王は、後に謀ってヴォルスング王を殺し、彼の息子達を捕らえる。彼らは一夜に一人ずつ狼に食べられていくが、シグニューの助けでシグムンドだけは難を逃れる。シグニューは魔法使い女(セイズコナ)と姿を取り替えて森に隠れたシグムンドの元に行き、臥所を共にして彼の子シンフィヨトリ(Sinfjtli「白黒まだらの足(枷)をした者」?)を宿す。シンフィヨトリは、シグムンドの元でヴォルスング一族らしい勇気を示したため、シグムンドはシンフィヨトリと森で暮らす。そして、シンフィヨトリが十分に成長すると、シグムンドは彼を連れてシッゲイルの元へ行き、彼を殺して復讐を果たす。その後、シグムンドは故国へ戻り、父王の後釜に坐っていた王を追い払って王となった。シグムンドはボルグヒルドを妻とするが、このボルグヒルドの弟が、シンフィヨトリと一人の女を取り合ったとき、シンフィヨトリは彼を殺してしまう。ボルグヒルドはこれを恨んで、シンフィヨトリを毒殺し、シグムンドは彼女を追放する。彼は異教時代の最大の勇士であり、かつ最大の王であったと伝えられる。

シグムンド王は、エリュミ(Eylimi)王の娘ヒョルディース(Hjrdís)が、どの女にもまして自分に相応しい相手だと聞き、エリュミ王を訪ねる。そこには彼と同じ目的でフンディング王の息子リュングヴィ王も来ていた。ヒョルディースはシグムンドを選び、彼とフンディング一族との間に戦争が起こる。

 戦いがしばらく続いてから、帽子を目深にかぶって青黒い上衣を着た男が戦闘の中に入ってきた。男は片目で、手には槍をもっていた。この男はシグムンド王の方に向かってきて、槍を王の先(まえ)で上にあげた。そしてシグムンド王がはっしと斬りつけると、剣は槍に当って、まっ二つに折れた。このあと、戦死者の多寡が逆転し、戦運はシグムンド王を離れ、王の軍勢が多数斃れた。(p.31)

 ヒョルディースは、戦いのあと夜に戦死者の横たわる場へと赴き、シグムンド王が倒れている所に来て、王が治る見込みがあるかどうか、尋ねる。しかし王は答える。
 「多くの者が、殆どその望みもないのに生き返ることがある。しかし、運は私を離れてしまった。だから私は治してもらいたくない。あの剣が折れたからには、オージンは私が剣を抜くことを欲せぬのだ。オージンが望んでいた間、私は戦闘を行ってきたのだ」
 彼女が言った。
 「あなたがお治りになって父上の仇を討ってくださいましたら、私はかけたものは何もないと思いますのに」
 王は言う。
 「それは他の者が当てにされることだ。そなたは男児を身ごもっておる。その児をよく、また気をつけて育てて欲しい。この男児(こ)は名高くなり、我ら一族第一の者となろう。それから、剣の破片も気をつけて取って置くのだ。これからは名剣がつくられ、グラムと呼ばれよう。これを私たちの息子が身につけて、それで、決して忘れられることのない多くの偉業をなしとげ、そしてこの世のある限り、息子の名は生きつづけよう。」(p.32-33)

剣を折ったのは、無論、オージンである。菅原は訳注で「シグムンドは戦神オージンから選ばれてこの剣を贈られていた。これが折れたいまは、オージンの館ヴァルホルに赴かねばならない。」(p.160)と書いている。その後、戦いの終わった戦場に、デンマークのヒャールプレク王の息子アールヴ(Álfr)が通りかかり、ヒョルディースは彼のもとに身を寄せる。彼女は、アールヴのもとでシグムンドの子シグルズを生む。「彼については誰もが異口同音に、行動と体格の点で彼とならぶ者はなかったと言っている。」(p.36) 



〈注意!:本ページは書きかけです〉

このページは書きかけです。「グングニル」のページを公開する都合上、制作途上の段階で仮公開しているに過ぎません。いずれ加筆・修正する予定ですので、気長にお待ち下さい。



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