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オートクレール(Halteclere

分類名剣
表記◇オオトクレエル(井上, 坂), ◇オートクレール(有永, 佐藤, 神沢ほか), ◇オート・クレール(新倉), ◇アルテクレーレ(寺田)
◇Hauteclaire(有永1970), ◇Hauteclère(佐藤1973, 新倉), ◇Hauteclere(小川)
◇Halteclere(O v.1363, 1463), ◇Altaclere(V4 v.1436)
語意・語源◇「高く清らか」「いとも清き」(有永)
系統シャルルマーニュ伝説
主な出典◇『ロランの歌』 (La Chanson de Roland
中世フランスの叙事詩を代表する武勲詩(現存するのは凡そ83篇)の中でも、最も代表的な傑作で、フランス文学史全体の中でも最も古い作品の一つ。皇帝シャルルマーニュの家臣として勇名を馳せた名将ロラン伯と、スペインの地を統べる異教の王マルシルとの激烈な合戦をうたう。 最古の写本であるオクスフォード写本(オクスフォード大学付属ボドレイ図書館蔵)は1170年頃のものと推定され、原作は1100年頃のものと思われる。ただし、原作の年代決定にはなお異論も多く、古くて1000年ごろ、新しくて1158年という説がある。その物語の骨子をなすのは、シャルル大帝によるスペイン回教徒討伐の一挿話であって、778年8月15日、大帝の軍がスペインから帰還するに当たって、その後衛軍がピレネー西方の国境ロンスヴォーの峠で、その地方の住民バスク人の襲撃を受けて大損害を蒙った事件である。(有永)
◇ベルトラン・ド・バル=シュル=オーブ? 『ジラール・ド・ヴィエンヌ』 (Bertrand de Bar-sur-Aube, Girars de Viane, 1200頃)?
◇ハインリヒ・フォン・フェルデケ 『エネイーデ』 (Heinrich von Veldeke, Eneide, 1185頃)?
参考文献 ◇井上勇, 昇曙夢編 『神話傳説大系 第九卷 佛蘭西・露西亞篇』 近代社, 1928.4
◇坂丈緒, 相良守峯訳 『世界文學全集古典篇 第三卷 中世敍事詩篇』 河出書房, 1952.5
◇バーバラ=ピカード(那須辰造訳)『オクスフォード 世界の民話と伝説4 フランス編』 講談社, 1978.9(初版1964?)
◇佐藤輝夫ほか訳 『ローランの歌/狐物語 中世文学集 II 』 筑摩書房, 1986.10(1971.12)
◇有永弘人訳 『ロランの歌』 岩波書店, 1965.1
◇佐藤輝夫 『ローランの歌と平家物語 前編』 中央公論社, 1973.3
◇佐藤輝夫 『ローランの歌と平家物語 後編』 中央公論社, 1973.6
◇日本フランス語フランス文学会編 『フランス文学辞典』 白水社, 1974.9
◇鷲田哲夫 『世界の英雄伝説5 ローランの歌 フランスのシャルルマーニュ大帝物語』 筑摩書房, 1990.3
◇新倉俊一, 神沢栄三, 天沢退二郎訳 『フランス中世文学集1 ―信仰と剣と―』 白水社, 1990.12
◇『世界文学大事典』編集委員会編 『集英社 世界文学大事典1〜6』 集英社, 1996.10-1998.1
◇有永弘人 「『ロランの歌』の注釈とその問題点(上)」 『東北大学文学部研究年報』第20号, 1970.8
◇寺田龍男 「火を吹くディートリヒ―ディートリヒ・フォン・ベルン研究序説―」 『ノルデン』29号, 1992.11
◇新倉俊一 「剣―伴侶そして分かつもの―」 (『フランス中世断章―愛の誕生―』 岩波書店, 1993.2所収
◇小川直之 「サラディンを倒したイスラムの名剣マルグレ」 ( 『続 剣と愛と 中世ロマニアの文学』 中世大学出版部, 2006.11所収) )


◆知将オリヴィエの愛剣

オートクレールは、ロランの親友にしてシャルル十二臣将の一人、知将オリヴィエ Oliver の愛剣である。オクスフォード本『ロランの歌』2208-09行によれば、オリヴィエは、ヴァル・ド・リュニエル Val de Runers(Rivies)辺塞国公爵レニエ(le duc Reiner)の息子であり、同3710行によれば、オリヴィエの妹オード Aude はロランの婚約者であったという。ただし、同時代史料にかろうじてその名をとどめるロランと異なり、オリヴィエには実在を裏付ける史料がなく、伝説の中で創作された人物であると考えられている(以上、有永弘人訳『ロランの歌』(1965)及び有永の「『ロランの歌』の注釈とその問題点(上)」(1970)p.184、佐藤輝夫『ローランの歌と平家物語 前編』(1973)p.279)。

さて、オートクレールの名は、オクスフォード写本を訳出した有永弘人訳『ロランの歌』(1965)で、1363行、1463行、1507行、1953行の各行に見ることができる(ちなみに、佐藤輝夫訳(1986)・神沢栄三訳(1990)では、三ヶ所目は1550行。オクスフォード写本に忠実なのは佐藤・神沢で、有永は内容的な矛盾などを理由に1467〜1670行の順序を変更している)。まずはそれらを順に引用しよう(引用文中の( )は原文にあるルビを示す)。

ロランこれを見ていう、「戦友よ、何をなすや?
かかる戦(いくさ)に、われ、棒きれに用はなし。
焼刃(やいば)、刃金(はがね)のみぞ、役には立たん。
君の剣、オートクレールと名づけしはいずこぞ?
鍔金は金(きん)、柄(つか)は水晶にて飾れるもの」。
「われ、抜くを得ざりき。」とオリヴィエ答う、
「討ち仆すのに大童(おおわらわ)なりければ!」 AOI.
  (107節1360〜66行:乱戦の最中、長柄の切れ端を持ったオリヴィエとロランとの会話)

われはわが剣デュランダルもて戦わん。
君は、戦友よ、オートクレールもて戦え。
幾多の場所に、われら両刀持ち歩きしことぞ!
幾多の戦を、われら成就したりしことぞ!
剣につきて、汚らわしき歌の歌わることあるべからず。
  (113節1462〜66行:オリヴェエへのロランの台詞)

オートクレールを手に持てり。その刃金は血ぬられてあり。
  (116節1507行)

焼刃ぎらりと光るオートクレールを手に持ち、
先尖れる金色の兜めがけて、マルガニスを討ち、
花飾りも石の飾りも、地面に飛び散らす。
  (147節1953〜55行:オリヴィエ×マルガニス戦)

1364行は「幻想の武器」には珍しい剣の形状への言及。神沢栄三は、より明確に「黄金造りの鍔に、柄頭は水晶なりしが」と訳している(『フランス中世文学集1』(1990)p.68)。また、1954行に見えるマルガニス(他写本によればアルガリフ)は、サラゴスの王マルシルの叔父である(1914行, 佐藤訳は伯父とする)。オリヴィエはマルガニスを討ち取るが、自身も重傷を負い、視力を失ってロランに斬りつけてしまう。声で相手がロランだと気がついたオリヴィエは赦しを請い、ロランはこれを赦して二人は友情のうちに別れる。オリヴィエはフランスとロランを祝福して息絶える(2012行)。


◆「高くして清らか」

有永はオートクレール初出の1363行に「語意は「高く清らか」、「いとも清き」と解される。―この剣の伝説は、『ヴィエンヌのジラール』に詳しい(ゴーチエ)」と注しているが(p.269)、「『ロランの歌』の注釈とその問題点(上)」(1970)には、より詳しい次のような注釈が載っている(p.247)。

U est vostre espee, ki Halteclere ad num ? 名剣オートクレール(Hauteclaire)の登場であるが、些か変った登場振りである。語意は「高くして清らか」か、「いとも清き」かのいずれかであるが、ロランの名馬が同義の形容詞二つ(「古老」)から成っていることを想起すると、この銘号も、「高くして清らか」の意味であろうか。ただし剣が「高し」の意は明らかでない。この形容詞は『歌』の中では種々の意味に用いられていて、その範囲で考えるなら人の言葉について用いた一〇九七行の例、lur paroles [sunt] haltes (その言辞は威厳あり。)の転用と見られるかと思う。現代語の fiére に相当すると見てよいであろう。なお、この剣の伝説は、『ヴィエンヌのジラール』 Girars de Viane に歌われているとゴーチエが注している。

文中に出てくる「ロランの名馬」とは、1153行に登場する「駿足の名馬ヴェイヤンティフ」のこと。この Veillantif は、「老年」を意味する二語を合成したもので、「「古老」とでも訳すべきか」と有永は註している(1970, p.239)。つまり、オートクレールもこれと同じく("halte"を「清い」にかかる副詞とみるのではなく)「高い」と「清い」という二つの形容詞を合成したものと見るわけである。

また、『ヴィエンヌのジラール』については、佐藤輝夫の『ローランの歌と平家物語』(1973, 前編p.309-310, 後編p.275-279)や鷲田哲夫の『世界の英雄伝説5』(1990, p.190-196)に詳しい記述がある※1。鷲田によれば、この『ジラール・ド・ヴィエンヌ』(『ヴィエンヌのジラール』)は、1200年頃に書かれたと推定される武勲詩である。そのあらすじは次の通り。

シャルル大帝の妃ヒルデガルドに度重なる侮辱を受けたジラール・ド・ヴィエンヌは、主君であるシャルルに叛旗を翻す。シャルルはヴィエンヌの町を包囲し、戦いは七年にも及んだが決着がつかない。そこで、勝敗を決するため、シャルルの甥であるロランと、ジラールの弟ルニエの子(つまりジラールの甥)オリヴィエが決闘することになる。この一騎打ちはローヌ河のある島で行なわれるが、決着はつかず、雲の中から現れた天使によって戦いの終結が宣言される。両者は和睦し、永遠の友情を誓う。同時にロランとオリヴィエの妹オードとの婚約も結ばれる。

佐藤によれば、同様の挿話は北欧の『カルラマグナス・サーガ』 Karlamagnassaga にも含まれているという。ただし、これと比べると『ジラール・ド・ヴィエンヌ』には、「ローヌ河の州の中でのオリヴィエとローランの決戦、その決戦に際してのオリヴィエの名剣オートクレールの名の由来、それを河の州に携行するオードの配慮などが、長々と書かれて」いるという(前篇p.310)。『ジラール・ド・ヴィエンヌ』の邦訳は残念なことに、2008年2月現在存在しないものと思われるが、そこにオートクレールのことが書かれているのは間違いないようである※2

なお、寺田龍男によれば、ハインリヒ・フォン・フェルデケの宮廷叙事詩『エネイーデ』にもオリヴィエの剣「アルテクレーレ」(おそらくオートクレールのドイツ語訓み)が登場するという(「火を吹くディートリヒ―ディートリヒ・フォン・ベルン研究序説―」(1992)、「ナーゲルリング」のページも参照のこと)。以上、要継続調査。

※1 : 佐藤(1973)は『ジラール・ド・ヴィエンヌ』の作者として、ベルトラン・ド・バル=シュル=オーブ Bertrand de Bar-sur-Aube の名を繰り返し挙げているが、鷲田(1990)は作者についてまったく言及していない。記述を省いただけかも知れないが、もしかしたら17年の間に学説が変わって、ベルトランは作者とは見なされなくなったのかも知れない。最新の研究動向に触れるには、まずフランス語に堪能である必要がありそうだが、英語さえままならない私には無理な相談である。

※2 : ロランとオリヴィエとの決闘を物語として読むことの出来る邦書に、バーバラ=ピカード著、那須辰造訳の児童書、『オクスフォード 世界の民話と伝説4 フランス編』(初版は1964か)がある。その冒頭に収録される「ふたりのわかものの決闘」が、この挿話を再話したものと思われるのである。ただし、決闘の決着に際して天使が現れない、オートクレールの名前が登場しない(同書に続いて収録される「勇士ローランのつのぶえ」には登場している(p.32)。これは明らかに、先に引用した『ロランの歌』107節に当たる場面)など、佐藤や鷲田の語る『ジラール・ド・ヴィエンヌ』のあらすじとは相違する点も少なくない。
  なお、ピカードの語る物語において、決闘の日にオリヴィエが腰に帯びていた剣は、「オリビエが武士としてみとめられた日に、ビエンヌのユダヤ人からおくられたもの」(p.14)とされているが、これはデュランダルによって折られてしまい、その後、別の剣が町から届けられている。小川直之によれば、「武勲詩では、神から剣を授かったというメトセラ Methuselah に関するヘブライ人伝説をおそらくは起源として、刀工にはユダヤ人が多い」という(「サラディンを倒したイスラムの名剣マルグレ」『続 剣と愛と』(2006)所収, p.149)。



〈ネット検索:「オートクレール」〉

◇調査日:2004/07/08
◇方法:Googleで、4,285,199,774ウェブページから検索
◇対象:ヒット数約 305 件、うち上位 100 件を集計

項目HIT内訳
TV&PCゲームに登場する武器6442オートクレール『ロマンシング サ・ガ2』(SFC・RPG・スクウェア・1993)に登場(大剣)(入手困難)。
14オートクレール『テイルズ オブ デスティニー2』(PS2・RPG・ナムコ・2002)に登場(剣)(非買品)。
オートクレール『ARCTURUS アークトゥルス』(Win・RPG・グラビティ社(韓国)&ソンノリ・2000/日本ファルコム・2003)に登場(ソード)。
オートクレール『英雄伝説VI―空の軌跡―』(Win・RPG・日本ファルコム・2004)に登場。
オートクレール『Epica Stella 〜エピカ・ステラ〜』(PS・SRPG・ヒューマン・1998)に登場。
宝剣オートクレール『天使の詩〜白き翼の祈り〜』(SFC・RPG・日本テレネット・1991)に登場(両手用剣)。
聖剣オートクレール『グランディア エクストリーム』(PS2・RPG・エニックス・2002)に登場(細剣)。
★本家「オートクレール」
ネットゲームに登場する武器オートクレール『KanonRPG』(RPGツクール2000・RPG・同人ソフトサークルはちみつくまさん(フリーウェア)・2000)に登場(剣)。
オートクレール『エンドレスバトル』(不特定多数参加型のCIGオンラインゲーム)に登場(ただし元ネタは明らかに『ロマサガ2』。何故なら、クレイモア→クロスクレイモア→オートクレール→ムーンライトorデイブレードと進化するから)。
聖剣オートクレールPBMもどき(オリジナルキャラクターを架空世界で創作する遊び)に登場。ムテルア王立騎士団、聖騎士団長に与えられる武器…という設定。
オートクレール『ジオブレイド』(非同期型RPG)に登場。
オートクレール『女神転生』(TRPG)のオリジナルデータ上の武器、ナイト・オブ・シャルルマーニュ(長剣)につける銘の一例として登場。
名剣 "オートクレール" 『エターナルデザイアー』(非同期型RPG)に登場(長剣:ただし参加者が独自に作製した武器である可能性あり)。
ゲームに登場する競走馬オートクレールネットゲーム『TAG CITY for ADULT』に登場(牝・鹿毛)。
オートクレール『ウイニングポスト6』(PCノーマル/PCPK版・KOEI)に登場(名前そのものは自作(対戦用)か)。
ハンドルネームオートクレールBBS投稿者
サイト名「Hauteclaire(オートクレール)」七里龍夢氏のサイト:ただし現存しないらしい。
その他オートクレール2004?/06/16及び2004/06/19の日記の題名(両者は別の日記)。ただし、「名づけ」の理由は不明(内容から判断できず)。
暗黒剣オートクレール自作ファンタジー小説に登場する伝説の武器。
聖剣「オートクレール」オリジナルファンタジー「LandLopers」(岡田珠華氏による自作イラストの設定)に登場する剣。
オートクレール自作小説(ただし『アンジェリーク』(恋愛SLG・KOEI)を元ネタにした二次創作)に登場する白馬の名前。
オートクレール自作小説(ただし『Fate/stay night』(伝奇活劇ビジュアルノベル(18禁)・TYPE-MOON)を元ネタにした二次創作)に登場する(召喚された?)オリヴィエの所持する剣。
合計100

大方の予想通り、ダントツで『ロマンシング サ・ガ2』の「オートクレール」がトップ。普通に考えれば、新しいゲームの方が有利なはずなのだが、2002年発売の『テイルズ オブ デスティニー2』と比較しても、ちょうど3倍のヒット数を記録した。これは『ロマサガ2』が、メジャーでかつ出来の良いゲームであったことに加えて、ゲーム中での「オートクレール」の位置づけが原因になっているように思う。それは、「あるボスモンスターを倒した時、一定確率で入手できる(それ以外の方法では入手できない)」という入手の困難さである。それが記憶に残り、事あるごとに語られる原因となるのだろう※3

また、馬の名前としての「オートクレール」が計7ヒットしているが、これは明らかに現実の競争馬「デュランダル」の影響だろう。しかし、「デュランダル」が10,000件を越えるヒット数を誇ったのに比べて、今回はたったの300ヒット。えらい違いである。この知名度の差が、メジャーなものからマイナーなものまで、数々のゲームを上位にヒットさせた原因だと思われる。

ちなみに、『ロランの歌』の中では、特にこれといった特殊能力を発揮しなかったオートクレールだが、ゲーム等々の中では「聖剣」とされることが多い気がする。これは、「いとも清き」というオートクレールの語源を知っていた…というわけではなく、単に"名前に濁点がなく"清らかなイメージがあったから、といった単純な(しかしなかなか興味深い)理由なのではないだろうか? (以上、細部修正を除き2004/09/05記)

※3 : 実はこれだけでは説明不足である。入手困難なだけなら、そもそも入手できたプレイヤーの数が限られ、記憶には残らないからだ。これがゲーム中最強の武器なら、無理して手に入れようとする者も多いだろうし、有名にもなるだろう。しかし、「オートクレール」は「一刀両断」という技が使えるようになるだけで、お金で買える武器よりも攻撃力が低い。したがって、普通に考えれば手に入れる必要はあまりないのだ。にもかかわらず、それでも手に入れたくなり、無数のリセットを繰り返してでも手に入れようとする。ゲームをやらない人には分からないかもしれないが、それが「真の」RPGプレイヤーというものなのだろう。もちろんそんな不毛な行為も、そのゲームそのものの出来が良くて初めてヤル気になるわけで、そう考えると、10年以上の時を経て語り継がれる『ロマサガ2』は、やはり名作なのだと思う(言いたいことは結局それか…)。


〈ネット検索:「オートクレール」2回目〉

◇調査日:2008/02/06
◇方法:Googleで検索
◇対象:ヒット数約 6,950 件、うち上位 100 件を集計

項目HIT内訳
実在・現役の競走馬5050オートクレール牝。鹿毛。2004/03/06生まれ。父はアグネスタキオン、母はブロードアピール。馬主キャロットファーム、生産者ノーザンファーム。
コンピュータゲームに登場する武器3022オートクレール『ファイナルファンタジーXI』(PS2・MMORPG・スクウェアエニックス・2002-)に登場(剣)。
オートクレール『ロマンシング サ・ガ2』(SFC・RPG・スクウェア・1993)に登場(大剣)(入手困難)。
オートクレール『テイルズ オブ ジ アビス』(PS2・RPG・ナムコ・2005)に登場(剣)。
オートクレール『Kanon RPG』(RPGツクール2000・RPG・同人ソフトサークルはちみつくまさん(フリーウェア)・2000)に登場。
★オートクレール『国取物語』(CGI・SLG・MMO Communications(フリーウェア)・2006-)に登場(剣)。
オートクレール『アラド戦記』(Win・MMORPG・ハンゲーム・2006-)に登場(ただし一つの攻略サイトでしか確認できず)。
★本家「オートクレール」
ハンドルネームオートクレールファイアーエムブレム・ときめきメモリアルシリーズの攻略・二次創作サイトのサイト閲覧者投稿企画?投稿者。
オート・クレール『アラド戦記』公式サイトの掲示板投稿者。
オートクレールモンスターメーカー(1988年に翔企画で発売されたカードゲーム)公式サイトの掲示板投稿者。
その他オートクレール『シルバーレイン』(トミーウォーカーが運営するプレイバイウェブ、舞台は現代日本、2006年8月サービス開始)で日下部砌というキャラクターが名乗っている称号(意味は未詳)。
オートクレール場所は掲示板。投稿者のハンドルネームのようだが繰り広げられているのは何かのロールプレイか? サイト本体とリンク切れしているため詳細不明。
オートクレール・スタッサン嬢ジュール・バルベー・ドールヴィイ(Jules Barbey d'Aurevilly, 1808-1889)の小説『罪のなかの幸福』 Le Bonheur dans le crime の登場人物名。ヒロインの女剣士?
オートクレール「完全競馬必勝攻略法!」のページだが、オートクレールが何を指しているのか不明。サイト名? それとも攻略法の名前だろうか?
シャルル・オートクレール『ペパロイド大戦』(ペーパークラフト製作者がオリジナルのロボット等のペーパークラフトを作り、それで軍団を結成しながら遊ぶサイト)で、オリジナルのロボットに付けられた名前。
名剣オートクレールオリジナル長編小説『DEATH・OVERTURE〜死神序曲〜』(オンラインに公開)に登場する剣の名前。
オートクレール「オートクレール」をキーワードにした検索画面。ただし、画面中でヒットしているのは競馬とFFXI。
合計100

3年7ヶ月を経て、二度目のネット検索である。ヒット数は305件から6,950件と20倍以上に増加。ネット世界の変化や、Googleの機能の変化も影響しているだろうが、「オートクレール」という名前が、この三年半でかなり知名度を上げたことは間違いなさそうである。

その最大の要因は、デュランダルの場合と同様、競馬にある、と見るのが妥当だろう。丁度五割、100件中50件が、競走馬オートクレールへのヒットだった。ダントツである。そこで、気になるのは、前回の検索でヒットした「ネットゲーム『TAG CITY for ADULT』に登場」する「牝・鹿毛」の競走馬。これはもしかしたら、実在のオートクレールのことだったのかも知れない。競走馬オートクレールは、2004/03/06生まれなので、前回検索をかけた2004/07/08にはすでに生まれて四ヶ月が経っている。競走馬の名前は、いつ付けるものなのだろう?(どなたか詳しい方、教えて下さい。)

『ファイナルファンタジーXI』は、トップでヒットしたので、もう少し競馬と良い勝負をするかと思ったのだが、結局ダブルスコアが付いてしまった。競馬人口とオンラインゲーム人口の差なのだろうか。『ロマンシング サ・ガ2』の4ヒットは、15年前のゲームであることを考えれば、かなり健闘している方だろう。テイルズシリーズは、『デスティニー2』から『ジ アビス』に代替わり。コンピュータゲームの入れ替わりの激しさは、一つのゲームが長く遊ばれない現状をあらわしているのかも知れない。



〈おまけ:バルベー・ドールヴィイ『罪のなかの幸福』〉

さて、今回のネット検索で最も気になったのは、競馬でもゲームでもなく、小説『罪のなかの幸福』の登場人物、オートクレール嬢である。この小説の著者は、オリヴィエの剣を意識して、この名前を自らの小説の作中人物に付けたのだろうか。フランスの小説であることはネットで分かったのだが、私はフランス人の名前について、どのようなものが一般的なのかよく知らない。オートクレールなどという名前は聞いたことがないが、偶然に剣と同じ名前、ということもないとは限らない。もしオリヴィエの剣と関係がないなら、このページで取り上げる意味はあまりない。しかし、剣が意識されているなら、フランス本国でのこの剣に対するイメージの一端を示す、という意味で、(少なくとも私にとっては)興味深い事例である。

恥ずかしながら、私はドールヴィイという人物を知らなかったので、まずは『集英社世界文学辞典』にあたってみる。すると、ちゃんと項目が立っている。ジュール=アメデ・バルベー・ドールヴィイ(Jules-Amédée Barbey d'Arrevilly, 1808-1889)。フランスの小説家、批評家であるという(3, p.530)。そこで、『フランス文学辞典』にあたると、こちらにも項目があり、『ディヤボリック』 Les Diaboliques (1874)については、作品名でも項目が立っていた。これは6編の中・短編からなるそうで、そのうちの一つが『罪のなかの幸福』 Le Bonheur dans le crime であるらしい。しかし、その内容については、あらすじが簡潔に説明されるのみで、登場人物の名前に関する情報はなし(p.442)。まあ当然だが、私の知りたい情報を得ることはできなかった。

仕方がないので、そのまま図書館で小説そのものを探すと、『世界幻想文学大系』第八巻(国書刊行会, 1975)に秋山和夫訳『魔性の女たち』 Les Diaboliques が収録されていることが分かった。「幻想文学」! しかも、このシリーズは、紀田順一郎と荒俣宏の責任編集である。普段、近代小説などほとんど読まないのだが、今回は珍しく読んでみることにした。荒俣宏は密かに尊敬しているし、登場人物に剣の名前が付いているから、という理由でこの小説を読む人間もそういないだろう、と思うと、なかなかに愉快だったからだ。それは次のような小説だった。

小説の舞台は19世紀のフランス。以前「V……」の町で医者をしていたトルティ博士が、「私」に向かって、植物園で見かけたセルロン・ド・サヴィニ伯爵夫婦の秘密を明かす、というのが、物語の外枠である。そして、そのサヴィニ伯爵の妻こそが、先のネット検索にヒットしたオートクレール・スタッサンその人である。トルティ博士の語るところによれば、V……の町は、《決闘好みの町》と仇名されたほど剣術を好む町だった。ある時、ここに滞在した近衛連隊の剣術師範は、この町で剣術道場を開いて余生を送ることにする。この師範は、本名をスタッサンといい、隊内では「急先鋒」という仇名で通っていた名剣客だった。スタッサンは50歳にしてその町の「尻軽な女工(グリゼット)」と結婚し、一人の女の子をもうける。そして、その名付け親には彼の道場によく出入りしていた貴族の中からアヴィス・ド・ソルトヴィル=アン=ボオモン伯爵が選ばれた。彼は大革命以前に聖王ルイ騎士に叙せられ、龍騎兵隊長でもあった人物で、当時70歳にはなっていた。

彼は「急先鋒」氏を大層尊重して、親しいものの言い方をしておったが、こう言ったのじゃ。『おぬしのような御仁の娘御じゃ。これはどうあっても勇士の剣のごとき名を付けて進ぜねばなるまい。オート=クレールとしようではないか。』そしてその女の子はそう名付けられたのじゃ。この聞き慣れぬ名前に、V……町の司祭は少し顔をしかめた。かつてその教会の洗礼盤も聞き覚えの無いような名前じゃが、名付け親がアヴィス伯であり、また、自由主義どもや絶えず騒ぎを起すものが居ったとしても貴族と聖職者との間には、腐れ縁のようなものがあるのが常じゃから、ローマ歴にクレールという名の聖女が見えることも手伝って、このオリヴィエの剣の名は、V……町を大して騒がせることなく、この娘に与えられたのじゃった。(p.157-158)

彼女の名は、まさしくオリヴィエの剣の名から取られたものだったのである。彼女は父から剣の手ほどきを受け、非常に優秀な剣士に、そして魅力的な女性に育つ。そんな彼女の噂を聞いて、道場にやって来たのが若きセルロン・ド・サヴィニ伯爵なのだが、その後の物語については、各自本書を読んでいただくということで。それにしても、「オートクレール」という名前の使い方として、これ以上のものはなかなか無いのではなかろうか。

ちなみに、私が個人的に面白いと感じたのは、最後まで何を考えているのかもう一歩掴めないオートクレールではなく、物語の終盤になってトルティ博士に本音を語るサヴィニ伯爵の前妻デルフィーヌ・ド・カントール嬢の方だった。そこに現代日本とは違う、19世紀フランスの、というより、19世紀フランスにおいてすでに過ぎ去ろうとしていたある価値観を見ることが出来た気がしたからだ。なお、訳者の秋山によれば、この短編には澁澤龍彦の翻訳があるという。いずれ気が向いたら、読み比べてみるのも面白いかも知れない。



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Copyright (C) 2004-2008 Akagane_no_Kagerou
2004/09/05:初版
2006/02/12:フォルダ構成の変更ついでに体裁を若干変更
2008/02/17:本文を全面的に改訂、〈ネット検索2回目〉〈おまけ〉を追加
2008/03/25:註2を追加するなど、若干修正
2008/04/13:表記欄を修正
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