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〜『酒呑童子』諸本に登場する刀剣名一覧〜

《第5展示室:おまけキャプション2》

出典別武器名一覧その2。『御伽草子』にも含まれる有名な『酒呑童子』(酒顛・酒天・酒典・酒伝とも)の物語には、六人の武将が登場する。源頼光、藤原保昌、渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、卜部季武の六人である。彼らは酒呑童子退治に行くにあたって、それぞれ武器を持っていくのだが、その名や特徴は『酒呑童子』諸本によってかなり異同がある。それを、とりあえず分かる範囲でまとめてみたら、以下のようになった。各伝本の性質などを加え、いずれもう少し整理するつもりだが、…まるっきり文学史の領域だなこりゃ。

ちなみに、物語の中で武器の名が登場する箇所は、基本的に二箇所ある。一箇所目は、童子退治のために都を出る際の身支度の場面。彼らは山伏に変装して山に登る(童子は出家には手を出さないため)ので、武器は笈に隠していくのである。二箇所目は、毒酒に酔って奥の寝所に退いた童子を退治するため、笈に隠していた武器を身に佩びる場面。そして、実際にそれを振るう場面がその後に続く。同じ伝本の同一の武器に関する記述に矛盾があるのは、これら二箇所の記述に食い違いがあるためである。

参考文献 ◇横山重、松本隆信編『室町時代物語大成 第三』角川書店、1975.1(香取本・慶大本・麻生本)
◇横山重、松本隆信編『室町時代物語大成 第二』角川書店、1974.2(岩瀬本・大東急本)
◇大島建彦、渡浩一校注・訳『新編日本古典文学全集63 室町物語草子集』小学館、2002.9(東洋大本)
◇市古貞次校注『日本古典文学体系38 御伽草子』岩波書店、1958.7(渋川版)


◆香取本:逸翁美術館蔵(香取神宮旧蔵)『大江山絵詞』(絵巻)

刀剣名登場せず。


◆岩瀬本:岩瀬文庫蔵『酒顛童子絵詞』(絵巻)

名称所持者概要
血すひ
(ちすい?)
頼光
(源頼光)
二尺八寸の剣。
石割
(いしわり?)
保昌
(藤原保昌)
二尺あまりの小長刀の中子を切り、柄を三束ほどにして、馬の尾でねた巻に巻いた打刀。「いし割」とも表記。
鬼切
(おにきり?)

(渡辺綱)
二尺を超える打刀。


◆大東急本:大東急記念文庫蔵『しゆてん童子』(土佐絵本)

名称所持者概要
くもきり
(蜘蛛切?)
よりみつ
(源頼光)
詳述せず。「くもきり、ちすいとて、二つのつるきあり、二しやく一すんありける、ちすいをそ、入られたる」
ちすい
(血吸?)
二尺一寸の剣。(実際に持って行ったのは「ちすい」のみらしく、童子との戦いで「くもきり」はあらわれず、「ちすい」の名のみ見える)
いわきり
(岩切?)
ほうしやう
(藤原保昌)
二尺あまりの小長刀の中子を切り、柄を三束ほどにして、馬の尾でねた巻に巻いたもの。別の箇所で「いしわり」という長刀を持っているが、同一の武器か?
おにきり
(鬼切?)
つな
(渡辺綱)
二尺あまりの打刀。「おに切」とも表記。


◆東洋大本:東洋大学附属図書館蔵『酒伝童子絵』(絵巻)

名称所持者概要
雲切
(くもきり)
頼光
(源頼光)
詳述せず。「雲切とて二つの剣あり、二尺一寸の血すいをぞ入れられける」(そのままでは意味が取れないが、これは本文に脱落があるためで、大東急本によって補える)
血すい
(ちすい?)
二尺一寸、もしくは二尺八寸の太刀。(実際の戦いで頼光が用いるのは「血すい」のみである)
石割
(いしわり?)
保昌
(藤原保昌)
二尺あまりの小長太刀(なぎなた?)の中子を切り、柄を三束ほどにして、馬の尾でねた巻に巻いたもの。打刀。
鬼切
(おにきり)

(渡辺綱)
二尺を超える打刀。


◆麻生本:麻生太賀吉氏蔵『酒典童子』(詞書のみ)

名称所持者概要
蜘切
(くもきり?)
頼光
(源頼光)
重代の太刀。
懐釼
(かいけん?)
保昌
(藤原保昌)
重代の長刀を太刀拵にして長柄にし、馬の尾でねた巻に巻いた太刀。
鬼切
(おにきり?)

(渡辺綱)
太刀。詳述せず。


◆慶大本:慶応義塾大学図書館蔵『しゆてんとうし』(絵巻)

名称所持者詳細
ちすい
(血吸?)
よりみつ
(源頼光)
太神宮より賜った重宝の太刀。嵯峨天皇の頃、坂上田村麻呂が伯耆国大原の五郎大夫「やすつな」(安綱?)という鍛冶に打たせたもの。田村麻呂が鈴鹿御前との戦いに用いたのもこの剣。高丸を退治した後、伊勢神宮に納めた。のち、頼光が参宮した際、「この剣をもって朝廷を守護せよ」との託宣があり、夢中に授けられた。
くわいけん
(懐剣?)
ほうしやう
(藤原保昌)
「ひせん」(備前?)の国の「すけひら」(助平?)という鍛冶が三年精進潔斎し、七重に注連を張って鍛えた秘蔵の太刀。ある時、信州の戸隠山で変化を従えたのもこの剣であるという。
おにきり
(鬼切)
つな
(渡辺綱)
源氏重代の太刀。頼光の父、多田満仲が筑前国三笠郡の「もんしゆ」(文壽?)という鍛冶を都に召して打たせたもの。「もんしゆ」は百日精進し、八幡の宝殿に参籠してこれを鍛えた。満仲が罪人を斬った際、鬚とともに斬ったことから「ひけきり」(鬚切)と名づけられた。頼光はこれを相伝したが、羅生門に変化が出ると聞き、綱に貸し与えて遣わした。綱は現れた鬼の腕をこの刀で切り落としたため、「おにきり」と名づけた。
なみきり
(波切?)
きんとき
(坂田金時)
太刀。詳述せず。
いしきり
(石切?)
さたみつ
(碓井貞光)
太刀。詳述せず。
あさまる
(痣丸?)
すゑたけ
(卜部季武)
「ひせん」(備前/肥前?)の国「よしをか」(吉岡?)の「もりつね」という鍛冶が打った太刀。


◆渋川版:渋川清右衛門刊記『御伽草子』所収「酒呑童子」(版本)

名称所持者概要
ちすい
(血吸?)
頼光
(源頼光)
二尺一寸の劔。
岩切
(いはきり)
保昌
(藤原保昌)
二尺の小長刀を「ふたへにかねをのべつけて、三束あまりにねぢ切」ったもの(二重に鍛え延べて、柄をねじ切って三束あまりにしたもの?)。
鬼切
(おにきり)

(渡辺綱)
太刀。詳述せず。


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