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グングニル(Gungnir

分類神槍
表記◇グングニル(ネッケル他), ◇グングニール(トンヌラ, グレンベック他), ◇ゴングナー(岡崎)
◇Gungnir(菅原1984他)
語意・語源◇"the swaying one"(Simek), ◇「揺れ動くもの」(テッツナー), ◇剣戟の響きをあらわす擬音(健部)
系統北欧神話
主な出典 ◇『シグルドリーヴァの歌』(Sigrdrífumál
北欧神話の重要資料である韻文のエッダ、いわゆる「エッダ詩」の一つ。900年頃にノルウェーで成立したものとされる。その内容は、オーディンにより魔法の眠りについたシグルドリーヴァをシグルズが目覚まし、彼女から種々の知識を授かるというもの。後半はシグルドリーヴァの忠告集の体裁をなす。この歌の中で語られるルーネ文字と呪術の関係は、ルーネ学にとてきわめて重要な資料になっている。(谷口1973)
◇スノッリ・ストゥルルソン『エッダ』(Snorri Sturluson, Edda
中世アイスランドを代表する文人スノッリ・ストゥルルソン(1179-1241)が1220年代前半にまとめた詩学入門書。現在知られるその構成は序文、第一部「ギュルヴィの惑わし」、第二部「詩語法」、第三部「韻律一覧」である。同書の本来の目的は、アイスランド人がキリスト教を公的な宗教として採用して後、衰退の運命を負った古来の詩芸の知識、つまり、詩人志願者すべてが会得すべき神話・伝説・語彙・韻律の知識を網羅することだったが、第一部に集中し、第二部で若干の追加がなされる神話をめぐる知識により、現在では北欧神話の重要な資料となっている。(菅原1984)
参考文献 ◇E.トンヌラ, G.ロート, F.ギラン(清水茂訳)『ゲルマンの神話―ゲルマンとケルトの神話―』 みすず書房, 1960
◇グレンベック(山室静訳)『北欧神話と伝説』 新潮社, 1971.12
◇V.G.ネッケルほか編(谷口幸男訳)『エッダ―古代北欧歌謡集』 新潮社, 1973.8
◇岡崎晋 『北欧の神々』 鷹書房, 1975.8
◇菅原邦城訳 『ゲルマン北欧の英雄伝説―ヴォルスンガ・サガ―』 東海大学出版会, 1979.7
◇谷口幸男訳 『アイスランド サガ』 新潮社, 1979.9
◇ステブリン=カーメンスキイ(菅原邦城・坂内徳明訳)『神話学入門』 東海大学出版会, 1980.12
◇K.クロスリイ-ホランド(山室静、米原まり子訳)『北欧神話物語』 青土社, 1991.9(1983.10初版)
◇菅原邦城 『北欧神話』 東京書籍, 1984.10
◇健部伸明と怪兵隊 『虚空の神々』 新紀元社, 1990.5
◇忍足欣四郎訳 『中世イギリス英雄叙事詩 ベーオウルフ』 岩波書店, 1990.8
◇H.R.エリス・デイヴィッドソン(米原まり子, 一井知子訳)『北欧神話』 青土社, 1992.9
◇佐藤俊之とF.E.A.R 『聖剣伝説』 新紀元社, 1997.12
◇ライナー・テッツナー(手嶋竹司訳)『ゲルマン神話 上 神々の時代』 青土社, 1998.11
◇武田龍夫 『バイキングと北欧神話』 明石書店, 2005.12
◇長谷川寛 「アングロサクソン英雄叙事詩「モールドンの戦」」 『日本大学農獣医学部一般教養研究紀要』第4号, 1968
◇長谷川寛 「サトン・フーと「べーオウルフ」」 『日本大学農獣医学部一般教養研究紀要』第9号, 1973
◇谷口幸男 「スノリ『エッダ』「詩語法」訳注」 『広島大学文学部紀要』43特輯号3, 1983.12
◇Rudolf Simek (Angela Hall 訳), Dictionary of Northern Mythology, D.S.Brewer, 1993(原著1984)


◆ロキのもたらした神々の宝物

菅原邦城の『北欧神話』(1984)によれば、北欧神話で主神とされる戦死者の父オージンは「グングニルという槍」をもっている(p.91)。この槍をオージンが手に入れる経緯は、スノリの『エッダ』第二部「詩語法」に語られているので、谷口幸男「スノリ『エッダ』「詩語法」訳注」(1983)から、該当箇所を引用してみよう。

 黄金はどうしてシヴの髪と呼ばれるのですか。ラウヴェイの子ロキが狡猾にもシヴの髪をのこらず刈ってしまったことがあった。トールはこのことを知ると、ロキをつかまえ、ロキが黒い妖精のところで、元の髪と同じようにのびるシヴの髪を黄金で作らせると誓うまでは、ロキの骨という骨を砕かんばかりだった。この後ロキはイーヴァルディの子らと呼ばれる小人たちのところへ行き、小人たちはこの髪と船スキーズブラズニルと、グングニルという名のオーディンの槍を作った。(p.41)

ロキは続いてブロッグとシンドリという小人の兄弟のところへ行き、これら三つと同じように見事な宝物を作れるかどうかに、自分の首をかける。ブロッグとシンドリはこれを受け、はえに姿を変えたロキに邪魔されながらも黄金の猪、腕輪ドラウプニル、槌(ミョッルニル)の三つを作りあげる。そして、ブロッグは賭けの勝負をつけるため、これを持ってアースガルズに赴く。

こうしてロキと小人が宝物を差し出したとき、アース神たちは裁きの席につき、オーディンとトールとフレイヤの下す決定は有効ということになった。そこでロキはオーディンに槍グングニルを、トールにシヴのつける髪を、フレイには船スキーズブラズニルを渡し、宝物全部の説明をして、その槍は正しい場所にとまったままでいないし、髪はシヴの頭におかれたとたんに皮膚にピッタリつく。そしてスキーズブラズニルは、どこへ行こうとしても、帆を上げるやいなや順風を受けるが、そうしようと思えば、布のようにたたんで小さい袋の中に入れて携帯することができる、といった。(p.42)

一方のブロッグは、オーディンに腕輪を、トールに槌を、フレイに猪を渡すが、アース神たちは槌を最上の宝物としたので、賭けは小人たちの勝利となった。自分の首を賭けていたロキは逃げようとするが、トールにつかまり、頭は賭けたが首は賭けていないと言い張る。そこで、小人たちはロキの唇を縫い合わせて黙らせ、首を取る代わりとしたのである。(終わり)


◆「両エッダ」に見るグングニル

グングニルの名は、スノリの『エッダ』第一部「ギュルヴィの惑わし(ギュルヴィたぶらかし)」にも登場している。また、いわゆる「エッダ詩」の一つ『シグルドリーヴァの歌』にも見える。菅原(1984)によれば、エッダ詩でこの名を挙げているのは、この『シグルドリーヴァの歌』のみだが、スカルド詩では、9世紀ノルウェーの老ブラギ・ボッダソンと10世紀アイスランドのエギル・スカラグリームスソンの使用がそれぞれ一例知られているという(p.91)。ここでは、谷口幸男訳の『エッダ』(1973)から『エッダ』「ギュルヴィたぶらかし」51章の一部と『シグルドリーヴァの歌』15〜17節(中略部分が16節)を引用しよう。

〜スノリ『エッダ』第一部「ギュルヴィたぶらかし」51章〜

アース神と死せる戦士たちは、甲冑に身を固め、かの野を目ざして進む。黄金の兜をいただき、美しい甲冑を身にまとい、グングニルという槍を手にしたオーディンが先頭を切って馬を進める。目ざす相手はフェンリル狼なのだ。(中略)狼はオーディンをのみ込む。これが彼の死だ。だが、間髪を入れず、ヴィーザルが立ちむかい、片足で狼の下顎を踏みつける。(中略)ヴィーザルは一方の手で狼の上顎をおさえ、その口を引き裂いたので、それが狼の命取りになる。(p.276)

場面は「神々の黄昏」などと訳される北欧神話における最終戦争「ラグナレク」である。戦場に赴くオーディンがグングニルを所持している。彼の相手をするのは、解き放たれた「フェンリル狼」である。オーディンはこの狼に飲み込まれてしまうわけだが、この時「グングニル」も一緒に飲み込まれてしまったのだろうか?

〜『シグルドリーヴァの歌』15〜17節〜

 ルーネの彫られるところといえば、輝く神(太陽)の前に立つ楯の上、アールヴァクの耳の上とアルスヴィズの蹄の上、ルングニルの車の下でまわる車輪の上、スレイプニルの歯の上、橇の滑り木の鉄の帯の上、
   (中略)
 ガラスの上、黄金の上、人びとの護符の上、葡萄酒、麦酒、居心地のよい椅子の中、グングニルの先、グラニの胸、運命の女神(ノルニル)の爪の上、梟の嘴の上。(p.145)

ルーネ(ルーン)の彫られる場所が羅列される中に「グングニル」が登場している。谷口訳『エッダ』(1973)の訳注によれば、槍先にルーネの彫られた実例として、3世紀のKowelの槍をはじめ、Dahmsdorf, Φvre Stabu, Wurmlingenなどの槍先に〈攻撃者〉〈疾駆する者〉〈試す者〉、そして所有者を示すらしいルーネ刻銘が見られるという(p.148)。なお、『ヴォルスンガ・サガ』にある同様の箇所は「ガウプニルのつっ先」となっており(菅原邦城訳(1979)p.65)、菅原は「グングニルの誤り」だと注している(p.177)。


◆「エッダ詩」に見るオージンの投げ槍

この他、エッダ詩には「グングニル」とは限定されないものの、オーディンの持つ槍に言及した箇所が幾つかある。『巫女の予言』(10世紀末)、『グリームニルの歌』(10世紀初頭)、『フンディング殺しのヘルギの歌2』(9世紀中頃、もしくは12世紀末)の順で紹介しよう。引用は再び谷口訳『エッダ』(1973)からである。

〜『巫女の予言』24節〜

オーディンは槍を放って、敵の軍勢の中に投げつけ、これがこの世で最初の戦となった。アース神の城壁は破られ、戦を告げるヴァンル神族たちは戦場を踏み荒すことができた。(p.11)

オーディンが実際に投げ槍を用いる場面である。谷口訳(1973)の『巫女の予言』訳注によれば、戦が始まる前に指導者が敵勢の中、もしくは敵勢を越えて槍を投げるのが古代の習慣だったという(p.20)。この点に関しては、項目を改めて詳述するが(→〈考察・特大版〉)、その前に確認しておきたいのは、ここに登場する槍が「グングニル」か否かである。

引用したのはアース神とヴァンル神との戦争の場面である。しかし、先のスノリの『エッダ』に従えば、グングニルを入手した時点で、既にヴァンル神のフレイがオージンたちとともにいる。これは両神族間の戦いが終わっていることを意味する。つまり、ここで投げられているのが「グングニル」なら、物語の前後関係に矛盾があることになるのである。この程度の矛盾は神話の特徴・特質と見るべきか、それともこの槍は「グングニル」ではなく、「グングニル」は戦争後に入手したもの考えるべきだろうか?

〜『グリームニルの歌』50節〜

 セックミーミルのところでスヴィズルとかスヴィズリルと名のったが、その名高い息子ミズヴィズニルを殺したときには、その老巨人の前で名を隠した。(p.57)

これはオージン自身の言葉の一部だが、文中の「スヴィズル(Sviður)」と「スヴィズリル(Sviðrir)」は「槍を持つもの」を意味する。つまり、「槍を持つもの」はオージン自身が自ら名乗った異名の一つなのである。五大サガの一つに数えられる『エギルのサガ』でも、主人公エギルが歌の中で、オージンのことを「槍の支配者」と呼んでおり(谷口訳『アイスランドサガ』(1979)p.133)※1、槍がオージンのシンボルだったことが分かる。先の『巫女の予言』と考え合わせると、もしかしたら「グングニル」入手の物語は、槍をシンボルとするオージンに後付けされたものなのかもしれない。

〜『フンディング殺しのヘルギの歌2』30節〜

ヘルギは老齢には達しなかった。ヘグニの子ダグが父の復讐のためオーディンに犠牲を捧げた。オーディンはダグに自分の槍を貸し与えた。ダグは義兄弟のヘルギをフィヨトゥルルンドというところで見つけ、その槍で刺し貫いた。ヘルギはその場で倒れた。(p.122)

オージンが人間に対して自らの槍を貸し与える場面である。この槍がグングニルだとすれば、グングニルは神々だけではなく、人間にも扱える武器だったことになるだろう。なお、ここで殺されているヘルギは、ヴェルスングの子シグムンド王とブラールンドのボルグヒルドとの間の子で、一族の敵であるフンディング王を倒したためにフンディング殺しと渾名された勇士である。彼はヘグニ王の子シグルーンと愛し合うが、ヘグニは自分の娘をグランマル王の長子ヘズブロッドと婚約させてしまう。シグルーンはヘルギに助けを求め、ヘルギはグランマルの子らに加え、ヘグニとその子ブラギを激しい戦の末に討ち果たす。生き残ったのは、ヘグニの子、シグルーンの弟に当たるダグだけであった。ダグは、オージンの助力によって義兄ヘルギを倒すことにより、父の復讐を遂げたのである。

※1 : Rudolf Simek の Dictionary of Northern Mythology (1984/1993Hall訳)の"Gungnir"の項にある"Egill calls him geirs drótinn ('lord of the spear')"、すなわち「エギルは彼(オージン)のことを「槍の支配者」と呼ぶ」という記述は、おそらくこれを指しているのだろう(p.124)。同書には"Even Bragi in the 9th century calls Odin Gungnis váfaðr ('Gungnir's shaker')"(9世紀のブラギはオージンのことを「グングニルを振るうもの」と呼んでいる)、"Kormákr names Hroptr(=Odin) as being Gungnir's bearer."(コルマークはフロプト(=オージン)のことを「グングニルを運ぶもの」と名付けている)との記述もある。



〈考察・特大版:グングニルはどのような槍か?〉

後述するネット検索の結果から明らかなように、グングニルはかなりの知名度を誇る「幻想の武器」である。しかし、それがどのような槍だったのか、という具体的な問題となると、神話・伝説の常で、そう単純に分かるわけではない。そこで、ネット上にある情報の出典を確かめる意味でも、グングニルについてその様々な側面について、個別に考えてみた。

◆語源は?

Rudolf Simek の Dictionary of Northern Mythology (1984/1993Hall訳)の"Gungnir"の項によれば、"Gungnir"は"the swaying one"を意味するという(p.124)。日本語にすれば、「ゆり動かすもの」もしくは「ゆれ動くもの」といったところだろうか。ライナー・テッツナーの『ゲルマン神話(上)』(1998手嶋訳)もその語彙集で、グングニル(Gungnir)は古ノルト語であり、元々は「揺れ動くもの」の意※2だとしている(p.296)。一方、健部伸明と怪兵隊の『虚空の神々』(1990)によれば、グングニル(Gungnir)は「剣戟の響きをあらわす擬音」だという(p.213)※3。外国語に弱い館長にはどちらが正しいのか分からないが、要は「諸説ある」ということなのかもしれない。

なお、佐藤俊之とF.E.A.Rの『聖剣伝説』(1997)は、「グングニールという名前の由来についてはさまざまに語られているが、「貫く」ということを音として表現したものとする説が有力だ」と述べており(p.20)、健部(1990)の擬音語説に近い。 要継続調査。

※2 : 同書は「〈もともとは揺れ動くもの〉の意.」と書いているが、これは「もともとは〈揺れ動くもの〉の意.」と解すべきだろう。本ページの記述はこの解釈による。

※3 : フリー百科事典『ウィキペディア』はこの説を採用しており、『はてなダイアリー』「グングニルとは」でも言及されている(2005/03/21現在)。

◆材質は?

ネット上には、この槍の柄がトネリコで出来ていたとする説が散見される※4。佐藤俊之とF.E.A.R の『聖剣伝説』(1997)には「とねりこの木でできた柄も恐ろしく頑丈で、どんな武器もこの槍を破壊することはできない」との記述があり(p.20)、同書がその出典となっているものと考えられるが、何を根拠としているのかよく分からない。

一方、2005年12月に出版された武田龍夫の『バイキングと北欧神話』には、「神々への六つの贈り物」と題して、本ページ冒頭に紹介したスノリの『エッダ』第二部「詩語法」の一部が再話されているが、ここにはグングニルの柄をとねりことする記述がある。当該部分を引用しておこう。

それからイバルディの息子たちはイグドラシル(世界樹)から切り取った頑丈なとねりこの木から柄をつくり、赤く灼熱した鉄を打ってこれにはめ込んで槍をつくった。グングニールという槍である。
「これはオーディンの敵たちにとっては恐るべき武器となるよ。狙った的を外さないことになっているんだ」(p.117)

同書が『聖剣伝説』を参照しているとは思えないし、著者武田龍夫は文学者ではないので、この記述が創作であるとも考えにくい。武田はその「あとがき」で「これまで読んできたバイキングと北欧神話に関する多数の外国語文献類(北欧語とともに英語の文献、辞典、読み物類が多いが、これは英国とバイキングの歴史的密着度と米国に北欧系移民が多い背景からである)を中心に書きためてきたメモをもとにして」同書を書いたと述べている(p.170)。参考文献にも多くの洋書が挙がっているので、欧米の再話あたりに典拠があるのかも知れない。

なお、古英語の英雄叙事詩『ベーオウルフ』には「鈍色に輝く穂を取り付けたとねりこの柄の槍は、ひとところに/木立さながらまとめて立てられた」との文言があり(忍足欣四郎訳 p.45)、アングロサクソン英雄叙事詩『モールドンの戦』にも「ビュルフトノース盾を握りしめ,細き秦皮(ルビ:とねりこ)材製の柄の付きし槍を振り翳し,憤然として彼の使者に斯く返答せり」とある(長谷川寛訳 p.53-54)。さらに、7世紀のサットン・フー船装墓から出土した槍の柄は、その断片の分析調査から材質はとねりこであることが判明したという(長谷川寛 「サトン・フーと「べーオウルフ」」 p.39)。したがって、少なくともある時期、現実の槍の柄にとねりこが使われていたことは間違いない。

※4 : フリー百科事典『ウィキペディア』、『はてなダイアリー』「グングニルとは」など(2005/03/21現在)。

◆威力は?

グングニルの威力の凄さを示すエピソードとしてネット上に散見されるのは、この槍が名剣グラムを破壊したというものである※5。この言説の直接の出典は、おそらく佐藤の『聖剣伝説』(1997)に求められるが、その「オーディンは戦場へとおもむき、シグムントの聖剣グラムを、グングニールの一撃で破壊してしまうのである」(p.20)という記述は、特別、グングニルの破壊力を強調しているわけではない。おそらく、同書のこの部分につけられた「聖剣グラムを折った槍」という小見出しが一人歩きした結果が、ネット上に存在する「グラムを折った=凄い破壊力」という言説なのだろうと思われる。

この『聖剣伝説』(1997)の記述の出典は、伝説的サガの一つ『ヴォルスンガ・サガ』(詳細は「リジル」の項参照)にあるが、これにはいささか問題がある。結論を先に述べるなら、私個人は、このエピソードがグングニルの破壊力を示すという解釈を、妥当性に欠けるものと考えている。ともかく、まずは実際に『ヴォルスンガ・サガ』を見てみることにしよう。以下の要約・引用は菅原邦城訳『ヴォルスンガ・サガ』(1979)からである。なお、シグムンドの剣にまつわる物語については「グラム」の項で詳述しているので、そちらもご覧頂きたい。

ガウトランドの王シッゲイルと、フーナランドの王でオージンの子孫であるヴォルスングの長女シグニューとが結婚した時、その饗宴に帽子を目深にかぶった片目の老人(明らかにオージン※6)が現れた。老人は持っていた剣を館の真ん中に立っていた木の幹に突き刺し、唯一これを抜くことの出来たシグムンド(ヴォルスングの長男でシグニューとは双子)がこの剣を手に入れる。のち、シグムンドは王となり、妻としてエリュミ王の娘ヒョルディースを娶るが、彼女を巡ってフンディング王の息子リュングヴィ王と戦争になる。

 戦いがしばらく続いてから、帽子を目深にかぶって青黒い上衣を着た男が戦闘の中に入ってきた。男は片目で、手には槍をもっていた。この男はシグムンド王の方に向かってきて、槍を王の先(まえ)で上にあげた。そしてシグムンド王がはっしと斬りつけると、剣は槍に当って、まっ二つに折れた。このあと、戦死者の多寡が逆転し、戦運はシグムンド王を離れ、王の軍勢が多数斃れた。(p.31)

 ヒョルディースは、戦いのあと夜に戦死者の横たわる場へと赴き、シグムンド王が倒れている所に来て、王が治る見込みがあるかどうか、尋ねる。しかし王は答える。
 「多くの者が、殆どその望みもないのに生き返ることがある。しかし、運は私を離れてしまった。だから私は治してもらいたくない。あの剣が折れたからには、オージンは私が剣を抜くことを欲せぬのだ。オージンが望んでいた間、私は戦闘を行ってきたのだ
 彼女が言った。
 「あなたがお治りになって父上の仇を討ってくださいましたら、私はかけたものは何もないと思いますのに」
 王は言う。
 「それは他の者が当てにされることだ。そなたは男児を身ごもっておる。その児をよく、また気をつけて育てて欲しい。この男児(こ)は名高くなり、我ら一族第一の者となろう。それから、剣の破片も気をつけて取って置くのだ。これからは名剣がつくられ、グラムと呼ばれよう。これを私たちの息子が身につけて、それで、決して忘れられることのない多くの偉業をなしとげ、そしてこの世のある限り、息子の名は生きつづけよう。」(p.32-33)

問題は次の三点である。

  1. そこで使われた槍はグングニルか?
  2. そこで折られた剣はグラムか?
  3. 剣を折ったのは槍の力か?

明言されてはいないものの、ここに登場する槍を持った片目の男が神オージンであることは疑いない(先の※6参照)。そのため、やはり明らかになっていない槍の名を「グングニル」とするのは妥当な解釈だと言えるだろう。したがって、問題点1は一応クリアとなる。

続いて問題点2だが、こちらはそう簡単にはいかない。問題はどの時点で剣に「グラム」という名がついたかである。シグムンドの最期の言葉をみると、オージンの槍に折られた時点で、この剣はまだ「グラム」とは呼ばれていないことが分かる。彼の持っている(持っていた)剣は、鍛えなおされ、自らの息子が持つ段階になって初めて「グラムと呼ばれる」ようになるのである。事実、『ヴォルスンガ・サガ』で「グラム」の名が現れるのはここが最初で、シグムンドの振るうこの剣には名前がついていない※7。つまり、オージンが折った時点でその剣は「グラム」ではなかったのである。

さて、それでは最後の問題である。折られたのが「グラム」ではないとしても、その元になった剣であることは確か。それを折ったのがグングニルの力なら、このエピソードが槍の破壊力を物語ると言っても良いような気がする。しかしである。先に引用した『ヴォルスンガ・サガ』をもう一度読み返していただきたい。この時、斬りつけたのはシグムンド王の方であって、オージンは槍をほとんど動かしていない。そこにあるのは「槍で剣を破壊する」行為ではなく、「槍に当たった剣が折れた」という事実のみなのである。

さらに、「あの剣が折れたからには、オージンは私が剣を抜くことを欲せぬのだ。オージンが望んでいた間、私は戦闘を行ってきたのだ」というシグムンド王の言葉も注目に値する。オージンが折ったのは、オージン自身が与えた剣なのだ。それはオージンの意思によってどうにでもなる代物だったのではないだろうか? つまり、槍はオージンの意思を伝える道具として利用されただけであり、剣を折ったのは(槍の破壊力ではなく)所持者オージンの力と意思によると私は思うのである。「名剣を折ったから凄い槍」というのは、物語の背景に無頓着な、あまりに安直すぎる解釈であるように私には感じられる。

さらに深読みをするなら、次のような解釈も可能である。本サイト「デュランダル」の項で指摘した通り、武器は名前を持つことによって、その所持者から自立する。シグムンドが振るっていたのは、名前を持たない「オージンから与えられた剣」なのであって、それはオージンの意思から独立したものではない。そのため、シグムンドは剣を通してオージンによって戦わされていたのであり、オージンの意思によって剣は簡単に折られてしまう。また、オージンの持つ槍も、ここでは「グングニル」という名で呼ばれることのない、単なる槍である。それは、ここでの槍の役割が、槍固有の能力を発揮することではなく、所持者オージンの一部としてその力・意思を伝達することにあることを、よく示しているのではないだろうか?(…考えすぎってツッコミはナシで)

※5 : フリー百科事典『ウィキペディア』、『はてなダイアリー』「グングニルとは」など(2005/03/21現在)。

※6 : 本文中ではオージンと明言されていないが、「頭には帽子を目深に被っていた。白髪だらけで年取っていて片目であった」(p.6)という本文について、菅原(1979)は訳注で「オージンの容姿を示す典型的な表現」としている(p.148)。

※7 : ただし、シグムンドの息子シグルズがこの折れた剣を母から受け取る際、「シグムンド王が二つに折れた剣グラムをあなたに渡されたと、ぼくが聞いていることは、本当でしょうか」(p.44)と話しているのを聞くと、折られた時点でその剣が「グラム」と呼ばれていたようにも取れる。しかし、シグムンドの所持していた時にはその名が言及されず、シグルズの手に入って後、「それから剣グラムを靱から払って」(p.57)などと度々「グラム」という名で呼ばれていることを考えるなら、やはり「グラム」という名がつけられたのは、鍛えなおされた後だと考えるのが妥当であろう。

◆能力は?

スノリの『エッダ』「詩語法」の上記引用部分において、肝心のグングニルに関する説明「正しい場所にとまったままでいない」の意味が今ひとつはっきりしなかった。「正しい場所」とは何処のことなのだろうか? そこで、カーメンスキイ『神話学入門』(1976/1980菅原訳)の付録「スノッリ『エッダ』―「詩語法(スカールドスカパルマール)」抜粋」(菅原邦城訳)から、同じ箇所を引用してみよう

さて、ロキと侏儒が宝物を差しだしたとき、アースたちは裁きの席に着き、オージンとトールとフレイが下した決定は変えられないものとされた。このときロキは、オージンには槍グングニルを、トールにはシヴがつけるはずの髪を、フレイにはスキーズブラズニルを渡して、宝物みんなの説明をした――槍は的に当たって決してそのまま止まっていない、また髪はシヴの頭にのせられたとたん肉に付きはえる、そしてスキーズブラズニルは...(後略)(p.168-169)

該当箇所は「的に当たって決してそのまま止まっていない」となっており、谷口訳とは若干の相違があることが分かるだろう。谷口訳の「正しい場所」がここでは「的」と訳されているようである。的に当たってからもさらに動く、ということは、所持者の手元に戻ってくるということか、それとも自ら他の敵を探して飛び回るということだろうか?(もし前者だとすると、トールに贈られた槌(ミョッルニル)と同じ能力を持っていることになるが…) 今度は菅原邦城『北欧神話』(1984)中に引用された同じ箇所の訳をみてみよう。

さて、ロキたちが宝物を差し出したとき、アースたちは裁きの座に着き、オージンとソールとフレイの下す決定が有効とされた。それからロキがオージンに槍グングニルを、ソールにはシヴがつけるはずの髪の毛を、フレイにはスキーズブラズニルを渡して、宝物のすべての説明をした。槍は決して的を外すことがない、また、髪の毛はシヴの頭に置かれたとたんに肉に付きはえる、それから...(後略)(p.77)

該当箇所は「決して的を外すことがない」となっており、前の二つの訳とはかなり異なった表現になっていることが分かる。その意味は明瞭で、要はグングニルは百発百中、必中の槍であるということだろう。『神話学入門』の付録も、ここで挙げた『北欧神話』中の引用部分も、訳者はともに菅原邦城氏なのだが、この違いは何によるのだろうか? ちなみに、この箇所を谷口訳(1983)は43章としているが、菅原(1984)は同一箇所を44章としている。加えて、裁きの座に着いた三人目の神の名を、谷口訳は女神「フレイヤ」とし、菅原訳はどちらも「フレイ」とする点も相違する。文脈から考えれば「フレイ」の方が妥当な気がするが、谷口訳は誤植だろうか?

ちなみに、グレンベックの再話『北欧神話と伝説』(1971)では、当該箇所は「グングニールは何物にも妨げられることなく狙った相手に命中する」(p.75)となっており、ホランドの再話『北欧神話物語』(1991)では、ロキに「これはグングニルといって、ほかの槍とどう違うかというとね、これは標的を決してはずさないのだよ」と言わせている(p.108)。いずれも、当該箇所の意味は「必中」と取られているわけである。そうすると、やはり「必中」が最も妥当な解釈なのかもしれないが、これはグングニルが投げ槍であることからの類推なのではないか、との疑念も残る。投げ槍に最も必要な能力は、命中率の高さだと考えられるからだ。谷口訳の「正しい場所にとまったままでいない」がより正確な訳である可能性もあるのである。原文を知らない館長には判断しかねる。要継続調査。

◆意味は?

現在調査中。近日公開予定?



〈ネット検索:「グングニル」〉

◇調査日:2005/03/21
◇方法:Googleで、8,058,044,651ウェブページから検索
◇対象:ヒット数約13,600件、うち上位100件を集計

項目HIT内訳
曲名2622『グングニル』J-POPのバンド、BUMP OF CHICKENの曲名。作詞・作曲は藤原基央。アルバム『THE LIVING DEAD』(2004)収録。
そのフラッシュ版。
サイト&ページタイトル15GUNGNIR〜グングニル〜日記サイトのタイトル。BUMP OF CHICKEN(バンプ・オブ・チキン(以下BUMP))の曲名から命名。
針金グングニルコラムサイトのタイトル。管理人はBUMPのファンらしい。
グングニルとダイヤモンド個人ブログのタイトル(ただし現在は変更されているらしい)。管理人はBUMPを「崇拝して」いるという。
神槍グングニル車関係のサイトのタイトル。
Gungnirテキストサイトのタイトル。管理人はBUMPの「グングニル」が好きらしい。
-Gngnir- グングニル個人サイト内の日記タイトル(由来は曲名…おそらくBUMP)。
グングニル〜プロフィールの類〜個人サイト(BUMP系コミュニティー)内のプロフィールページ名(由来はほぼ間違いなくBUMPの曲名から)。
グングニル個人サイト内の日記、ある日のタイトル(「グングニル / BUMP OF CHICKEN」。ただし日記の中身とのつながりはなさそう。なお、タイトルが「曲名/アーティスト名」となっている日は他にも多数あり)。
グングニル個人ブログ、ある日のタイトル(管理人曰く「タイトルはたまたま頭に浮かんだものを」)。
「グングニル」個人ブログ、ある日のタイトル(出典は不明だが、同ブログは曲名をタイトルにすることが多く、管理人はBUMP好きである)。
TV&PCゲームなどに登場
(武器以外)
10『グングニル』同人ゲーム(Win・ロボット戦争物デジタルノベル・グングニル製作委員会・2003)のタイトル。また、同ゲームに登場する機密兵器の名称。
グングニル『ガンヴァルキリー(GUNVALKYRIE)』(Xbox・アクションSTG・セガ・2002)に登場する敵の名前(らしい)。
グングニル『アカツキ試製一號』(Win・オリジナル2D格闘ゲーム・SUBTLE(同人ゲーム))に登場する技名。
『グングニル』携帯用ゲーム(STG・ポノス)のタイトル。
★本家「グングニル」グングニル
ハンドルネームグングニル映画レヴューサイト投稿者。
グングニル1111111サイト管理人。
グングニルBBS投稿者(IT関連企業サポート)。
グングニルAmazon.co.jp コミュニティ参加者(沖縄在住の中2)。
グングニル自作歌詞投稿者。
グングニルBBS投稿者(個人サイト)。
グングニル個人の日記に登場する架空のHN。
TV&PCゲームに登場(武器)天槍グングニル『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』(SFC・SRPG・任天堂・1996)に登場する伝説の武器。
グングニルのヤリ『SaGa2 秘宝伝説』(GB・RPG・スクウェア・1990)に登場する武器。
グングニルの槍『Visual Monster』(Mac・オンラインカードバトルゲーム・フリー)のカード(ただし没カードか?)。
ゲームプレイヤーによる名づけグングニル騎士団『ファイナルファンタジーXI』(PS2・MMORPG・スクウェアエニックス・2002〜)におけるギルドの名称。
グングニル『ラグナロクオンライン』(Win・MMORPG・ガンホー(Gravity社(韓国)開発)・2002〜)におけるギルドの名称(らしい)。
グングニルの喜劇『FEバトル』「第一回グランベル杯争奪戦」(メーリングリスト上で募集した『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』のキャラクターを各自で持ち寄り戦闘をさせてみるバトルシミュレーション)に参加したチームのチーム名。なお同チームのキャラクター3人のうちの1人が武器として「グングニル」を装備。
龍炎八卦*グングニル『FF BATTLE De i』(ネットゲーム・同時参加型RPG?)でプレイヤーが自分のキャラクターに名付けた名前。
グングニル『スライムブリーダーpuls』(Webゲーム(フリー)・遺伝子進化SLG)でプレイヤーが自分のスライムに名付けた名前。
小説に登場グングニル艦自作小説(『機動戦士ガンダム』の二次創作)に登場する戦艦の名称。
グングニル横山光輝・原案/重馬敬・著『MASK THE RED 赤影』(角川書店、2001-2002) に登場する妖槍。意志を持っているらしい。
天槍グングニル自作小説(『ファイアーエンブレム 聖戦の系譜』の二次創作)のタイトル(『Queen's Land II 天槍グングニル編』)。
その他18グングニル公開スクリプトの名称。UNIX-SERVER上に常駐させて使用する個人用ファイアウォール。
グングニルカードゲーム『モンスター・コレクション2』(太陽王の覚醒)のカード名(戦闘スペルカード(火の魔法))。
グングニル『CLOSED World』(PBeM)に登場するキャラクター(魔族である神葬の持つ槍だが、人格を持つ)。
フラッシュ作品だが消失のため詳細不明(2件中1件はURL内に"/bamp/"の語あり)。
Gungnir Ltd.社名(有限会社グングニル)。R18のゲームソフト製作会社か?
グングニルイラストのタイトル「その手にグングニルを。」(イラスト中、ネコのようなものが三叉の槍を持っているが…詳細不明)。
『 グングニル 』掲示板に投稿されたイラストタイトル。BUMP OF CHICKEN『グングニル』のイメージ画。
神槍グングニル投稿されたCG作品のタイトル。内容は高出力の固定砲(天使軍の最終兵器らしい)でその通称が「神槍グングニル」。
グングニルフラッシュ作品のタイトル。消失のため内容不明だが、おそらくはオンラインRPG『リネージュ』のPV。
神槍グングニル「現代空手道研究会」メンバー「シバ」氏(おそらく愛称)の前蹴りを「北欧神話の主神オーディン」の槍にたとえる。
グングニルはてなブックマーク(具体的な内容なし)。
ED回復薬のページだが、何にヒットしたのか不明。
グングニル不明(ページタイトルは「グングニル」だが、広告以外何もない)。
不明(ヒントもなし)。
合計100

まずは、カナ表記の問題から。どこにダッシュが入るかで幾つかバリエーションがあるが、最もヒット数が多かったのが「グングニル」で、書籍等でもこれが最も一般的なようである。それ以外の表記のヒット数は以下の通り(2005/03/21)。

「グングニール」 約7,560件  「グーングニル」 約1,000件  「グーングニール」 約6

「グングニール」もかなり多いが、トンヌラの『ゲルマンの神話』(1935/1960清水訳)、グレンベックの(山室静訳)『北欧神話と伝説』(1927/1971山室訳)、佐藤の『聖剣伝説』(1997)がこのカナ表記を採用しているので、典拠はその辺りにあるのかもしれない。一方、「グーングニル」はTVゲームの『テイルズ・オブ・ファンタジア』(SFC/PS/GBA・RPG・ナムコ・1995/2000/2003)が、主人公の武器(槍)として採用していることが、検索結果から分かる※8。このゲーム、小説、漫画、OVAにまでなっており、SFCからPS、さらにGBAへ移植されていることを考えると、かなり人気があるようだ。

さて、ヒット数が10,000を超えるものはそうはないので、幻想の武器としてはかなり知名度の高い方だと言えるだろう。この最大の要因となっているのは、まず間違いなく、検索結果でも一位となったJ-POPのバンド、BUMP OF CHICKENの楽曲『グングニル』の存在であると思われる。サイト自身やコンテンツのタイトルとして「グングニル」という名称を使っているサイトが散見されたが、これらの多くがこのBUMPの曲を直接の典拠としていることからも、それがうかがわれる。ただし、知名度の高さの原因はそれだけではなく、『ファイヤーエムブレム』や『サガ』、それに(検索結果には直接現れなかったが)『ファイナルファンタジー』(スクウェア)、前述の『テイルズ』シリーズなど、多くの人気TVゲームに登場していることも影響しているだろう※9

なお、BUMPの『グングニル』中には、「死に際の騎士 その手にグングニル 狙ったモノは 必ず貫く」という歌詞があるようで、「投げ槍」とは明言していないものの、作詞者が北欧神話の投げ槍グングニルを想定したことは間違いない(BUMPには『ユグドラシル』(2004)というアルバムもある)。ただ、当然のことながら同曲は北欧神話を主題にした歌ではないので、単なる槍の名前としてではなく、かなり象徴的にこの名称が使われていることも確かである(何を象徴しているかは…BUMPファンに聞いて頂きたい)。その象徴性や、複数の人気ゲームなどによる出典の多様性に、結果をまとめるのが面倒なほど、この名称がネット上に拡散した原因があるのかもしれない。

※8 : 実際には、私自身このゲームのPS版をやったことがあるので、以前からこの武器が登場することは知っていた。ゲーム中、この槍は三大神の1人オーディーンのものとされており、一度は主人公の手を離れるものの、オーディーンとの一騎討ちに勝つと(パワーアップした状態で)再び手に入れることが出来る。ちなみに、三大神の残る2人が「トール」「フェンリル」であるほか、「ミッドガルズ」「ヴァルハラ平原」「ヘイムダール」などの地名、物語の鍵をにぎる「世界樹ユグドラシル」など、同ゲーム中には北欧神話的なモチーフが随所に見られる(三大神の三人目がフレイではなく、フェンリルになっているところがなかなか上手い)。なお、個人的にはこのゲーム、藤島康介氏によるキャラクターデザイン、戦闘を含めたゲームシステム、細かい作り込みは素晴らしいが、ストーリーが今ひとつ好きになれなかったりする。

※9 : 『テイルズ・オブ・ファンタジア』も良いが、個人的に「グングニル」と言えば、やはり『ファイナルファンタジー』である。私の最も好きなシリーズ第5弾(SFC・1992)では、「グングニル」は召喚獣オーディンの使用効果の一つになっている(前作では単に武器(槍)として登場)。召喚された「オーディン」は「斬鉄剣」(敵全体を即死させる)か「グングニル」(敵一体にダメージ)の何れかを使って敵を攻撃してくれる。このオーディン、6本足(8本でないのは視覚的な不自然さを解消するため?)の灰色の馬に乗っているが、北欧神話のオーディンとは性格がかなり違う。神話から借りたのは名前と姿(の一部)だけなのだろう。倒される時の「もはやこれまで!」という台詞は、「斬鉄剣」を持つに相応しいサムライのそれである(だから好きなのだが)。



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Copyright (C) 2004-2007 Akagane_no_Kagerou
2004/12/31:初版
2005/03/17:〈考察:グングニルは必中の槍か?〉など大幅に増補・改訂
2005/05/03:〈考察・特大版〉〈ネット検索〉など大幅に増補・改訂
2006/02/10:フォルダ構成の変更ついでに体裁を修正
2006/04/30:〈考察・特大版〉材質の項に若干加筆、体裁を修正
2007/08/15:「表記」欄、〈考察・特大版〉などに加筆・修正
2008/02/04:細部修正
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